SRAMとDRAM、2種類のメモリー
SRAM(Static Random Access Memory)、静的RAM。
DRAM(Dynamic Random Access Memory)、動的RAM。
これらはコンピュータでデータの一時保存に使われるRAM(Random Access Memory)の一種です。しかし両者は設計、速度、容量、コストにおいて大きな違いがあります。
コンピュータシステムの性能を左右する重要な要素の一つがメモリです。特にSRAMとDRAMという2種類のメモリはそれぞれ特徴の違いを活かして異なる役割を担っています。一方は速度に優れもう一方は大容量でコスト効率が高いという特性を持ち現代のデジタル機器には両方が欠かせない存在となっています。今回はSRAMとDRAMの基本的な違いから実際の用途までコンピュータシステムの中核を担うこれらのメモリ技術について詳しく解説します。
SRAMとDRAMの基本的な違い
構造と動作原理の違い
SRAMとDRAMはどちらもRAM(Random Access Memory)の一種ですがその内部構造と動作原理は大きく異なります。
SRAM(Static Random Access Memory、静的RAM)は双安定ラッチ回路を使用して各ビットを記憶します。この方式では通常6つのトランジスタを使ってデータを保持するため比較的複雑な構造になっています。電源が供給されている限り追加の操作なしでデータを保持できる特徴があり「静的」と呼ばれる所以です。
一方、DRAM(Dynamic Random Access Memory、動的RAM)は各ビットを集積回路内の個別のコンデンサに格納します。コンデンサは電荷を保持することでデータを記録しますがこの電荷は時間とともに自然に放電してしまうためデータを維持するには定期的な「リフレッシュ」操作が必要です。このリフレッシュの必要性から「動的」と呼ばれています。
どちらも揮発性メモリであるため電源が切れるとデータは失われます。しかしDRAMはリフレッシュが必要という点で消費電力の面で若干不利になることもあります。
性能とコストの比較
SRAMとDRAMの最も顕著な違いは速度とコストのバランスにあります。
SRAMはアクセス速度が非常に速くDRAMと比較して数倍から数十倍の速度を誇ります。これはデータを保持するためのラッチ回路が常に安定した状態を維持しておりリフレッシュする必要がないためです。しかしその複雑な構造ゆえに製造コストが高く同じサイズの集積回路で比較するとDRAMより容量が小さくなる傾向があります。
一方、DRAMはSRAMに比べて低速ですが製造コストが大幅に安く同じスペースにより多くのデータを格納できます。1ビットあたり1トランジスタと1コンデンサという単純な構造のため高密度化が可能で大容量のメモリを経済的に製造できるのが強みです。
この2つの特性を表にまとめると以下のようになります。
| 特性 | SRAM | DRAM |
|---|---|---|
| 速度 | 高速(数ns) | 低速(数十ns) |
| コスト | 高い | 低い |
| 密度 | 低い | 高い |
| リフレッシュ | 不要 | 必要 |
| 消費電力 | 待機時は低い | リフレッシュのため常に一定 |
| 主な用途 | キャッシュメモリ | メインメモリ |
実際の用途と応用例
SRAMの主な用途
SRAMはその高速性を活かし速度が重要視される場面で活躍しています。
最も一般的な用途はCPUのキャッシュメモリです。プロセッサと主記憶(通常はDRAM)の間に位置するキャッシュメモリは頻繁にアクセスするデータを一時的に保存し処理速度を向上させる役割を担っています。SRAMの高速アクセス性能はこの用途に最適でL1、L2、L3などの階層的なキャッシュシステムに使用されています。
例えば現代のIntel Core i9プロセッサには最大3MBのL2キャッシュと36MBのL3キャッシュが搭載されておりこれらはすべてSRAMで構成されています。このキャッシュメモリのおかげでCPUはメインメモリにアクセスする頻度を減らし処理速度を大幅に向上させることができるのです。
またSRAMは低電力モードでのデータ保持能力も優れているためバッテリー駆動のデバイスやIoT(Internet of Things:モノのインターネット)機器など消費電力を最小限に抑える必要がある場面でも使用されています。ただしコストが高いためこれらのデバイスでも使用量は限られています。
SRAMの製造には高度な技術が必要でIntel、Samsung、Micronなどの大手半導体メーカーが主要なプレイヤーとなっています。特にIntelはプロセッサに内蔵するキャッシュメモリ用のSRAM技術に力を入れています。
イメージ用にこちらはキャッシュの取り付け映像。
DRAMの主な用途
DRAMは大容量でコスト効率が高いという特性から大量のデータを一時的に保存する必要がある場面で広く使用されています。
最も一般的な用途はコンピュータのメインメモリ(いわゆるRAM)です。PCやサーバー、ゲーム機などのシステムメモリとして使用されプロセッサが処理中のデータやプログラムを保持します。現代のPCには通常8GB〜32GBのDRAMが搭載されておりこれがOSやアプリケーションの動作に必要なワークスペースを提供しています。
またDRAMは特殊な形態としてグラフィックカード向けのGDDR(Graphics Double Data Rate)メモリとしても使用されています。GDDRは通常のDRAMを高速化・最適化したもので3Dグラフィックス処理に必要な大量のデータを高速に処理できるよう設計されています。最新のGDDR6メモリは最大24Gbpsのデータ転送速度を実現し高度なゲームや3DCG制作に不可欠な存在となっています。
スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスでもDRAMは重要な役割を果たしています。これらのデバイスではLPDDR(Low Power DDR)と呼ばれる低消費電力版のDRAMが使用されバッテリー寿命を延ばしながら必要なパフォーマンスを提供しています。
DRAMの主要メーカーにはSamsung Electronics、SK Hynix、Micron Technologyなどがあり世界中のデバイスにメモリを供給しています。中でもSamsungは最先端のDRAM技術開発で知られており2023年にはモバイルデバイス向けの最速LPDDR5X DRAMの開発を発表しました。
SRAMとDRAMの組み合わせによるシステム最適化
階層的メモリ構造の重要性
現代のコンピュータシステムではSRAMとDRAMの特性を最大限に活かすために階層的なメモリ構造が採用されています。この構造では速度の速いがコストの高いSRAMを小容量のキャッシュメモリとして使用し速度は遅いがコストパフォーマンスに優れたDRAMを大容量のメインメモリとして使用します。
これは自動車に例えると理解しやすいかもしれません。SRAMは小さくて高性能なスポーツカーのようなもので少人数を高速で移動させるのに適しています。一方、DRAMは大型バスのようなもので多くの人をやや遅いスピードで運ぶことができます。どちらも用途によって最適な選択が異なるのです。
この階層構造によりCPUは頻繁にアクセスするデータをSRAMキャッシュに保持し高速に処理を行いながらより大きなデータセットをDRAMメインメモリに格納することができます。これによってコストとパフォーマンスのバランスが最適化されシステム全体の効率が向上するのです。
将来の技術動向と展望
メモリ技術は常に進化し続けておりSRAMとDRAMも例外ではありません。
SRAMの領域では低消費電力と高速アクセスを両立させる技術の開発が進んでいます。例えばSTT-MRAM(Spin-Transfer Torque Magnetic RAM)などの新しい不揮発性メモリ技術をSRAMキャッシュに組み込む研究が行われており電源を切ってもデータを保持できる高速キャッシュの実現が期待されています。
DRAMの領域では高密度化と低消費電力化の取り組みが続いています。特にDDR5やLPDDR5などの新世代DRAMは前世代と比較して大幅に帯域幅が向上し消費電力効率も改善されています。またHBM(High Bandwidth Memory)のような3D積層技術を用いたDRAMも高性能グラフィックカードやAIアクセラレータで採用が広がっています。
さらに長期的にはメモリとストレージの境界を曖昧にする「ストレージクラスメモリ」の開発も進んでおり将来的にはSRAMとDRAMの役割にも変化が生じる可能性があります。しかし当面はSRAMの高速性とDRAMの大容量・低コスト性を組み合わせた階層的メモリ構造がコンピュータシステムの中核を担い続けるでしょう。
よくある質問(FAQ)
SRAMとDRAMはどちらが優れているのですか?
一概にどちらが優れているとは言えません。SRAMは速度面で優れていますがコストが高く容量が限られます。DRAMはコスト効率と容量面で優れていますが速度はSRAMより遅くなります。
現代のコンピュータシステムでは両者の長所を活かした階層的なメモリ構造を採用することで最適なパフォーマンスを実現しています。
PCのメモリを増設する際、SRAMとDRAMのどちらを選べばいいですか?
一般的なPCのメモリ増設で購入するのはDRAMです。SRAMはCPU内部やマザーボード上に直接組み込まれていることが多くユーザーが後から増設することはできません。PCのメモリスロットに装着するDDR4やDDR5などのメモリモジュールはすべてDRAMベースです。
スマートフォンにもSRAMとDRAMは使われていますか?
はい、スマートフォンにも両方のメモリが使われています。
スマートフォンのプロセッサ(SoC)内部にはSRAMベースのキャッシュメモリが組み込まれておりメインメモリとしてはLPDDR(Low Power DDR)と呼ばれる低消費電力タイプのDRAMが使用されています。身近に感じられるところであれば、スマートフォンのメモリの消費電力効率は電池消費に関し特に重要となります。

