ブラックベリー スマートフォンの先駆け、現在は?

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ブラックベリー スマートフォンの先駆け、現在は?

ブラックベリー社ことリサーチインモーション、RIM

ブラックベリーという端末で有名なブラックベリー社。そのBlackBerry社は元々Research In Motion、通称RIMとして知られた一世を風靡した大企業です。

この企業はマイク・ラザリディスによって、アメリカではなくカナダで創業されました。

彼は創業当時まだウォータールー大学の学生で、幼い頃から創意工夫を発揮していた人物です。起業家として成功しただけでなく科学と教育の熱心な支持者でもあります。基礎理論物理学の科学的研究、トレーニング、教育普及のための主要なセンターである理論物理学ペリメーター研究所に寛大な寄付を行っていることでも知られている。

blackberry-bush ブラックベリー スマートフォンの先駆け、現在は?

オバマ大統領とブラックベリー

2009年に大統領に就任する前、オバマ大統領はBlackBerryを愛用していたことで知られている。彼がこのスマートフォンを愛用したことで、ブラックベリーの安全な電子メール通信に対する評判と、米国大統領の安全な通信を確保するという課題の両方が注目されるようになった。

大統領に就任するとすぐに現職の大統領が通信にモバイルデバイスを使用することの安全保障上の意味が中心的な関心事となった。懸念にもかかわらず、こうしてオバマ大統領はBlackBerryの保持を主張し在任中に電子メールを使用し、スマートフォンを常用する初の米大統領となった。

こちらはブラックベリーを忘れて取りに行ったオバマ大統領。ニコニコである。

オバマ元大統領の就任初期のトレードマークでもあったブラックベリー。忘れて取りに戻るチャーミングな大統領。

シークレットサービスと国家安全保障局(NSA)は、大統領のモバイル通信の安全性を確保する任務を負い、オバマ大統領のブラックベリーには大幅な修正が加えられた。

具体的にはブラックベリーの開発元のRIM(リサーチ・イン・モーション)と協力し、潜在的な盗聴やハッキングの試みから保護するための暗号化、そしてセキュリティ機能の強化を行った。オバマ大統領に対しても妥協してもらい、メールを送ることができる人数を極端に制限するなどした。

その後、スマートフォンの技術が進化し、セキュリティ要件がさらに厳しくなるにつれ、政権はより高度で安全な通信手段を採用するようになった。

オバマ大統領は2017年に引退する訳だがその一年前の2016年に大統領は他社のスマートフォンに変更した。任期の前に引退させられてしまったとはいえなかなか長期間頼りにされていたといえるだろう。

ブラックベリーの先進性

ブラックベリーは1990年代後半から2000年代前半にかけて、特にビジネス・プロフェッショナルや政府関係者の間で際立った選択肢となったいくつかの先進的な機能で注目を集めた。

電子メールの統合とセキュリティ:安全なモバイル電子メールを提供した最初のスマートフォンブランドのひとつである。そのプッシュ型Eメールシステムにより、ユーザーは新着メッセージを手動でチェックすることなく自動的にEメールを受信することができた。

セキュリティについても特に初期からモバイル・セキュリティの重要性を真に理解していた企業の1つである。業界標準になるずっと前にエンド・ツー・エンドの暗号化をデバイスに実装し、BlackBerryデバイスで送信されたメッセージが意図された受信者にのみ読み取られることを保証していた。

BlackBerry Enterprise Server (BES)がサポートするEメールサービスのセキュリティは高く評価されていてデータ保護を重視する企業にとって好ましい選択肢となったのである。

物理キーボード: BlackBerry端末は、物理的なQWERTYキーボードでよく知られていた。当時は多くのユーザーが初期のタッチスクリーンのキーボードに比べて、タイピングが快適で効率的だと感じていた。

BlackBerry Messenger(BBM): このBBMはBlackBerry端末専用のインスタントメッセージングアプリケーションである。配信や既読受信といった機能が他のメッセージングアプリ(例えばワッツアップ、日本など東アジアで言えばLINE)で標準になるよりもずっと前に提供されていた。この安全で効率的なプラットフォームはBlackBerryの魅力に強く貢献したものの一つだ。

iPhone普及後の2000年代後半でもBlackBerry端末、特にBlackBerry CurveとBoldシリーズなどのユーザーはこのBBMサービスを使って友人とやビジネスパートナーと連絡を取っていた。

Introducing BlackBerry Messenger

データ圧縮:送信前にデータを圧縮するように設計されており、データ使用量を削減し、読み込み時間を改善するのに役立った。これも通信速度が現在の10分の1もない頃には素晴らしい機能であった。

バッテリー寿命: バッテリー駆動時間の長さもしばしば評価された点だ。一般ユーザーだけでなく当然ビジネスユーザーにとってはこれは重要なポイントであった。

入力デバイス:物理キーボードが有名だが、BlackBerry端末はまたトラックパッドやトラックボールなどの機能を導入してもいた。タッチスクリーンが主流の市場においてのほとんど唯一のユニークな存在であった。

2009年に発売されたBlackBerry Curve 8520は、手頃な価格、フルQWERTYキーボード、使いやすいトラックパッドナビゲーションが幅広い消費者に支持され、iPhoneと同世代でありながら、なんと同社のベストセラー端末のひとつとなったほどだ。

カーナビにいるブラックベリー:これはあまり知られていないが番外編である。2010年に買収した同じくカナダの企業であるQNX。

これは電車や産業用機械でも使われる組込みシステムのOSの企業である。このQNXは自動車業界のOSの主要プレーヤーであり、今でも多くの車の車載インフォテインメントシステムを支えている縁の下の力持ちだ。

競争にさらされるブラックベリー

このように素晴らしいビジネス端末として2000年代に入ってからも君臨していたブラックベリーであるが、iphone登場によるスマートフォン市場の発展で、いくつかの面からの激しい競争に直面した。

アップルのiPhoneの登場: 2007年に登場したiPhoneは全面がタッチスクリーンのインターフェイス、App Storeによる膨大なアプリのエコシステム、優れたメディア機能でスマートフォン業界に革命をもたらした。デザイン、機能性、ユーザー体験を重視したiPhoneは、多くの旧BlackBerryユーザーをも魅了したわけである。

アンドロイド端末: アンドロイドOSを搭載したスマートフォンも強力な競争相手として登場した。端末企業としては韓国のサムスン、台湾のHTC、そして後にグーグルがNexusとPixelのラインを提供するようになり、様々な市場セグメントに対応する幅広いデバイスが提供されるようになった。

アンドロイドのオープンなエコシステムは高価格帯のiPhoneを買わなかった層にもスマートフォンを普及することになった。多くの企業によるスマートフォン機体自体のカスタマイズ、GooglePlayはAppStoreより幅広いアプリケーションを可能にしたことでiPhoneとは違うが性能はほとんど同じレベルの廉価帯のスマートフォンを大量に普及し、消費者の間で人気の選択肢となったからだ。

ここにもBlackBerryは乗り遅れてしまった。ただこのスマートフォンの普及機にシェアを取れなかったのはブラックベリーだけではない。

誰もが一度は聞いたことがあると思うウィンドウズ・モバイルというのもあった。iOSやアンドロイドほどの成功は収められなかったが、ウィンドウズ・モバイルと後のウィンドウズ・フォンは、マイクロソフトのサービスとの統合やタイルベースのユニークなインターフェイスを提供することで競争に参加した。

しかしマイクロソフトほどの大企業でもこのモバイル・プラットフォーム競争では市場シェアを獲得するのに苦戦し、最終的には廃止された。

ブラックベリーの現在

ブラックベリー自体の取り組みを見よう。そもそもブラックベリーはスマートフォン市場では当初リードしていた側である。AppleのiPhone登場後もBlackBerry10オペレーティングシステムとZ10やPassportのようなデバイスでブランドを活性化しようと試みたが、大きな市場シェアを回復することはできなかったのだ。

BlackBerry 10 vs Android | Pocketnow

2011年にBlackBerry PlayBookタブレットを発売。しかしこのタブレットは、発売時にネイティブEメールをサポートしておらずAppleのiPadと効果的に競合できなかった。2013年に発表されたスマートフォンOSであるブラックベリー10は、ジェスチャーベースのユーザーインターフェイスとアンドロイドアプリを実行する機能を備えていた。ただし普及はやはりほとんどしなかった。

ブラックベリーは2016年にソフトウェアに軸足を移し、モバイルデバイス、アプリ、コンテンツを管理・保護するための単一の管理コンソールを提供するBlackBerry Unified Endpoint Manager(UEM)による企業モビリティのセキュリティ管理に注力し始めた。

例えばブラックベリーのコンテナ化ソリューションであるセキュアワークスペースは、企業がモバイルデバイス上の個人データと業務データを分離して保護することを可能にするものだ。

そしてこうしてハードウェアからセキュリティ・ソフトウェアやサービスを含むソフトウェアに重点を移しつつモバイルの再興もやはり諦めずに図っていた。

インドなど新興国市場やニッチ市場をターゲットとしてBlackBerryブランドの端末を生産したり、メーカーにブランドをライセンスをするなどの取り組みも行った。インドネシアにも技術協力などで携わってきた。

しかし最後に自社で端末を製造したのは2017年である。

その後はTCL Communication、OnwardMobilityとライセンス提携するもどちらも打ち切りとなってしまう。そしてついにブラックベリーの端末サービスについても2022年に打ち切られることとなった。

BlackBerry Cylance Case Study

そして近年、ブラックベリーはAI主導のサイバーセキュリティ製品群であるBlackBerry Cylanceを発表し、サイバーセキュリティ分野に重点的に進出しており新たな技術領域への拡大を示している。

ここまで歴史を振り返ればオバマ大統領を始め、ビジネスや政府機関でも昔から使用されてきたように高いセキュリティの積み上げがあるので、これはある意味では企業のコア競争力を活かした原点回帰といえるのかもしれない。

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