ニューラリンク 装着した猿が死亡?

IT企業

ニューラリンク 装着した猿が死亡?

イーロンマスクやカリフォルニア大学らが開発している神経科学デバイス、ニューラリンクによって猿が死亡したという事件が2023年後半に話題になった。

当初末期の猿たちを使用していたとイーロン・マスク側は主張していたが、一方では動物実験反対に関わる団体が強く異議を唱えていた。

しかしニューラリンクのその実験が行われているカリフォルニア大学デービス校の記録やその他の関係者の発言によると、猿は末期の病気を抱えたものではなく実際にニューラリンクによって猿は亡くなったという主張のが証拠が多く正しそうである。

より正確に客観的に言うならば猿の死亡の原因は、実験中のニューラリンクによってと、実験中のニューラリンクの実験上のトラブルの両方であるといえるだろう。

ニューラリンクのサル実験からの進展

しかしそうした実験の悲劇的な側面以外に、今回はその研究の凄さについても紹介したい。

そもそもニューラリンク社のサルを使った実験は、主に神経インプラント装置の機能テストと改良に重点を置いている。

これらの装置は神経活動を記録し、ニューロンを刺激するように設計されており、ユーザーが思考だけでコンピューターやロボットの手足をコントロールできるようにするためのものだ。

実験では、小型コンピューター「リンク」に接続された小型の高密度電極アレイをサルの脳に直接埋め込んだ。

注目すべきデモンストレーションのひとつでは彼らニューリンク社は、ジョイスティックを使って簡単なビデオゲームをプレイすることができる猿を紹介した。

彼らの装置は手や腕の動きに関連する猿のニューロン活動を記録した。

時間の経過とともに、機械学習アルゴリズムを使用することで、システムはニューロンデータのみに基づいて猿の意図する手の動きを予測できるようになった。最終的にはジョイスティックを切り離した後でも頭を使ってゲームのカーソルを操作できるようになったのだ。

2024年の大進展

そして2024年3月のつい最近、新たな発表が行われた。

アメリカ政府の許可もおりた彼らは、全身麻痺の人間への適用を実際に行った。そしてそれが今のところ上手くいっていて、その方はニューラリンクの技術でゲームをプレイしてみせたのだ。

同時に画面が映像に映っていないのでよくわからないが彼の表情を見ると助かっているのがわかる。

ニューラリンクの目的

ニューラリンクの長期的な目標はかなり野心的であり、神経障害の治療、感覚や運動機能の回復、最終的には脳とコンピュータの直接通信を可能にするなどの応用の可能性を含んでいる。

一言で言えば、彼らは人間の脳と先端技術とのギャップを埋めること、人間の認知能力と計算能力を融合させることを目指しているのだ。

同社の仕事は2017年の登場以来、広帯域幅のブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)の開発を中心に展開されてきた。生体医工学の最前線に位置するこの技術は医療応用と人間の能力強化の両方に潜在的な意味を持つ。

重度の身体障害を持つ人々にとってニューラルリンクのBMIは、発声や身体的相互作用の必要性を回避し、思考のみによるコミュニケーションを促進する可能性がある。

そしてAIが2022年頃から加速的に進化し続ける中、ニューラルリンクは、その技術によって人間がAIと融合することを可能にし、AIの無秩序な進化がもたらす潜在的な存続リスクを回避することも提案している。

メリットや将来性の反面で多くの批判も

もちろん加速的で先進的な研究にはつきものかもしれないが批判もあるので紹介をしておきたい。

まず、人間の脳をコンピューターと融合させるというアイデアはそれ自体倫理的に重大な問題を引き起こす。そして同意、プライバシー、ハッキングの可能性をめぐる問題が議論の最前線にもある。また、このような機器から生成され、アクセスされるデータを誰が管理するのかという発展的なレベルでの懸念もある。

猿の実験でのアクシデントはこれの一端でもあるが、脳にデバイスを埋め込むには侵襲的な処置が必要だ。そのため感染症、身体による拒絶反応、長期的な脳の損傷など、健康上のリスクが生じる可能性がある。

社会経済的影響も忘れてはならない点だ。このような先端技術へのアクセスに不平等が生じる可能性があり認知能力を高める金銭的余裕のある人とそうでない人の格差が広がる可能性がある。

他には透明性と科学的厳密性についても批判もあるようだ。こうした批判をしている人は主に科学者たちだ。

ニューラリンクの研究発表やプレゼンテーションの科学的厳密性や透明性を疑問視している。査読プロセスは科学的研究を検証するための基本的な側面であるが、ニューラリンク社の主張の一部は査読のある科学雑誌ではなく、注目される記者会見やエックスで発表されている。このため結果の頑健性と再現性についての懐疑的な見方につながっている。

例は既にできたものの、人間への応用の可能性と安全性も依然として広く批判的な意見は多いようだ。

実験はいくつかの有望な結果を示しているもののヒトに対する広範な治療に結びつけるには未だ長い道のりがある。サルの実験のニュースで象徴的に示されてしまったこの技術の侵襲的な性質、そして植え込みプロセスに要求される精密さ、そして長期的影響などが依然として大きな課題となっている。

ブレインインターフェイス研究は未だにフロンティア

最後にこうした研究開発はニューラリンクが特に有名だが、他にも世界中の色々な研究グループや企業が行っているのが現状である。

他の学術研究機関や民間団体は脳波を頭蓋骨の外から読み取る脳波計(EEG)キャップを使用するなど、より侵襲性の低い脳コンピューター・インターフェースの方法も模索しているところもある。

どういった方法が今後成功するかはまだわからないが、多様な集団が多様な方法でかなり独自に競争しているのがこのブレインインターフェイス界隈である。

リスクも多いが成功の際には未知の大きなベネフィット、または更に未知のリスクがあるのかもしれない、完全なフロンティアといえるだろう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました