クラリスワークスという紀元前のオフィス

クラリスワークス（後にアップルワークスと改名）は、アップル社の子会社であるクラリス社によって開発されたソフトウェアスイートで、1990年代に同社のポートフォリオの中で重要な製品として機能したものだ。

統合ソフトウェアパッケージとして、ワープロ、ドローイング、ペイント、表計算、データベース管理ツールなど、複数のアプリケーションが1つのプログラムに含まれていた。

学生から中小企業まで幅広いユーザーにアピールすることを目指し、ユーザーフレンドリーで習得しやすいように設計されていた。スマートフォンを普及させたあアップルまで一貫しているアクセシビリティ重視のアップルの姿勢が感じられる。

マッキントッシュパフォーマでクラリスワークスをしている映像。一部の人には懐かしすぎる映像だ。

クラリスワークスの最初のリリースは1991年で、当時は1つのアプリケーションで複数のタスクを実行できる統合ソフトウェアスイートというコンセプトは革命的としか言いようがないものであった。実際、クラリスワークスの起源は、Apple IIGSコンピュータシステム用に開発されたGSWorksという初期の製品にあり、これはAppleが自社のハードウェアエコシステムに特化したソフトウェアを構築する努力を続けていることを示しています。

特筆すべきは、クラリスワークスが比較的小さなディスク容量とメモリで動作することで、現代の同種のソフトウェアと比較して軽量であることが知られており、その設計とコーディングの効率性を示している。

このソフトウェアは商業的に大きな成功を収め、1990年代半ばにはMacintoshプラットフォームで最も売れたソフトウェア製品の1つとなり、Macintoshコンピュータの人気と商業的な可能性に貢献した。

クラリスワークスの魅力はMacintoshユーザーだけにとどまらず、WindowsやApple IIGSプラットフォームでも利用できるようになり、このようなクロスコンパチビリティが一般的でなかった時代に、プラットフォームの多様性に対するクラリスのコミットメントが反映されました。1990年代半ばには、クラリスワークスはMacintoshプラットフォームで最も売れているソフトウェア製品のひとつとなり、このことがこの製品が市場に受け入れられ、成功を収めたことの証となっています。

特徴のひとつはフレームベースモデルであり、テキスト、スプレッドシート、イメージなど、異なるタイプの複数のフレームをひとつのドキュメント内に調和して存在させることができるため、ユーザーにとって非常にフレキシブルなソフトウェアであった。現在では、スイート内のすべてのアプリケーションで一貫したグラフィカルインターフェースのコンセプトは標準的と思われるかもしれませんが、クラリスワークスの全盛期には、ユーザビリティとユーザーエクスペリエンスを大幅に向上させる印象的な斬新さであり、直感的なデザインを重視するアップルの姿勢を浮き彫りにしていました。

ClarisWorksはすべてのアプリケーションで一貫したグラフィカルインターフェースを採用し、シームレスで直感的なユーザーエクスペリエンスを実現した最初のソフトウェアスイートの1つである。また、統合ソフトウェア・スイートの概念を普及させるという重要な役割を果たし、Microsoft Officeといったより有名な後継製品への道を開いた。

今では一般的になったWYSIWYG（What You See Is What You Get）インターフェイスをいち早く採用したことで、ユーザーは最終的な出力に近い表現を画面上で確認することができ、この製品の先進的なデザイン理念を強調することができたのは革新的であった。

1998年、アップルがクラリスを主要事業部門に編入した後、クラリスワークスはアップルワークスとしてリブランディングされた。アップルワークスは、アップルのクロスプラットフォームソフトウェア戦略の転換を示す、Windows版を廃止する2002年まで、Mac OSとWindowsの両方をサポートする数少ないソフトウェアの1つであった。それも今日のクラウドベースで相互接続された領域とはかけ離れたソフトウェア環境だった時代にである。

アップルワークスは、2005年にiWorkに取って代わられ、アップルの生産性ソフトウェアのひとつの時代の終わりと新しい時代の始まりを告げた。

廃止されたとはいえ、クラリスワークス／アップルワークスのファイルは、PagesやNumbersといった最近のアップルのアプリケーションでも開くことができる。利益のために不要な更新ばかりしてサポートを打ち切り互換性を排除するような企業も多い中で、顧客との長期的な信頼性を大切にしているのが形として表れているといえる例であろう。一貫した高い理念と技術の両方がこうしたソフトウェア設計の長期的な互換性を生み出すことを可能にする。アップルの歴史の中で、クラリスワークスは、ソフトウェア開発における同社の初期の努力と、ユーザーフレンドリーなデザインと革新への長年のコミットメントを証明するものといえる。