イーロン・マスク、彼は何をした人でしょうか?
人によってそれは電気自動車のテスラ、宇宙開発のスペースX、それとも話題の多いSNSのX(旧Twitter)かもしれませんね。
しかし彼の起業家としての道のりは1995年から始まっていて、現在まで9つもの革新的な企業を設立・運営してきました。
本記事ではマスクが設立した組織を時系列で詳しく解説します。
初期のインターネット企業から最新のAI開発まで、彼がどのようにして世界各地の産業に影響を与えてきたのかを一緒に見ていきましょう。
起業家マスクの原点となった初期の成功
オンライン黎明期のZip2で基盤を築く
1995年、マスクが24歳の時に兄弟のキンバルと友人のグレッグ・コウリと共に設立したのがZip2でした。この会社は現在のGoogleマップのような存在で、新聞社向けにビジネスディレクトリと地図情報を提供していました。
インターネットがまだ一般的でなかった時代に、オンライン都市ガイドというアイデアは革新的でした。当時はまだダイヤルアップ接続が主流で、ブロードバンドインターネットの普及は10年先の話でした。
そうした環境の中で、Zip2は新聞社やメディア企業にとって重要なデジタルツールとなったのです。
4年後の1999年、CompaqがZip2を3億7,000万ドルで買収し、マスクは2,200万ドルを手にします。この資金が後の事業展開の元手となったのです。
PayPalの前身X.comで決済革命を起こす
Zip2売却の資金を元に、マスクは1999年にX.comを設立しました。オンライン決済サービスを提供する会社で、翌年にはConfinityという競合企業と合併してPayPalとなります。
興味深いことに、マスクは2000年にCEOを解任されてしまいますが、最大株主としての地位は保持していました。この解任劇は、技術的な方向性をめぐる取締役会との対立が原因だったとされています。
しかし後にマスク自身もこの経験を重要な学習機会として振り返っています。
2002年にeBayがPayPalを15億ドルで買収した際、マスクは約1億8,000万ドルを獲得しています。この経験は、後の事業運営において重要な教訓となったのではないでしょうか。
宇宙と地上で展開する壮大な挑戦
SpaceXが切り開いた民間宇宙開発の新時代

2002年、マスクはSpaceXを設立します。火星への人類移住という壮大な目標を掲げ、宇宙輸送コストの大幅削減を目指しました。
設立当初、マスクは自身の資産の大部分である1億ドルを投じてこの企業を立ち上げました。
初期は失敗続きでしたが、2008年にFalcon 1の打ち上げに成功し、NASAから16億ドルの商業補給サービス契約を獲得します。その後の躍進は目覚ましく、2010年にはDragonカプセルの軌道投入と回収、2012年には国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキングを成功させました。
2015年のFalcon 9初段の着陸成功は、宇宙開発における転換点でした。ロケットの再利用により、打ち上げコストを大幅に削減できるようになったのです。
従来の使い捨てロケットに比べて、打ち上げコストを約90%削減することに成功しています。2020年には有人宇宙飛行も実現し、現在はStarshipの開発を進めています。
Starlinkでインターネット革命も同時進行
SpaceXの副次的な成果として、衛星インターネットサービスのStarlinkがあります。2024年時点で数千基の衛星を運用し、世界各地でブロードバンドサービスを提供しています。
計画では最終的に4万2,000基の衛星コンステレーション(人工衛星群)を構築する予定です。
これにより、従来のインターネットインフラが整備されていない地域でも高速通信が可能になりました。僻地や災害地域での通信確保に大きな役割を果たしています。
電気自動車とクリーンエネルギーの普及
Teslaで自動車産業の常識を変える
2003年にマーティン・エバーハードとマーク・ターペニングによって設立されたTeslaに、マスクは2004年に6,500万ドルを投資し、2008年にCEOに就任しました。創業者ではありませんが、テスラの成功はマスクのリーダーシップなしには語れません。
2008年のRoadster発売から始まり、2012年のModel S、2015年のModel X、そして2017年のModel 3と、次々と革新的な電気自動車を世に送り出しました。Model 3は2018年から2021年まで世界で最も売れた電気自動車となっています。
テスラは電気自動車だけでなく、自動運転技術の開発でも業界をリードしており、完全自動運転の実現を目指しています。
2021年には時価総額が1兆ドルを超え、自動車メーカーとしては史上最高値を記録しました。現在では世界で14万人以上の従業員を抱える大企業に成長しています。
SolarCityでエネルギー事業も統合

2006年、マスクの従兄弟であるリンドン・リーブとピーター・リーブがSolarCityを設立し、マスクが会長兼主要資金提供者となりました。住宅用太陽光発電システムの設置で急成長を遂げ、2010年代中盤には米国最大の住宅用太陽エネルギー設置業者となります。
2016年にテスラが26億ドルでSolarCityを買収し、現在はTesla Energyとして統合されています。この買収により、テスラは自動車だけでなく、発電から蓄電までの包括的なエネルギーソリューションを提供できるようになりました。
太陽光パネル、蓄電池、電気自動車を組み合わせたエネルギーエコシステムの構築を目指しています。
人工知能と脳科学の最前線
OpenAIで始まったAI安全性への取り組み
2015年、マスクはサム・アルトマンらと共にOpenAIを共同設立しました。人工知能を安全かつ有益に開発することを目的とした非営利研究組織です。
設立時には10億ドルの資金調達を計画し、マスクも大きな資金提供者の一人でした。
現在話題のGPT-3やGPT-4の開発に貢献しましたが、マスクは2018年にテスラの自動運転AI開発との競合を避けるため取締役を辞任しています。後にマスクは、OpenAIが営利企業化したことに対して批判的な立場を取るようになりました。
OpenAIはその後、ChatGPTの大成功で世界的に注目を集めることになります。
Neuralinkで脳と機械の融合に挑戦
2016年に設立されたNeuralinkは脳と機械を直接接続するインターフェース(BMI:Brain-Machine Interface)の開発を行っています。神経障害の治療から人間の能力向上まで、幅広い応用を目指しています。
2019年にはラットでの実験、2023年にはFDAから人間での臨床試験許可を取得し、2024年には初の人間インプラントに成功しました。29歳の四肢麻痺患者ノーランド・アーボーさんが、思考だけで音楽を制御したりチェスをプレイしたりするデモンストレーションは世界中で話題になりました。
交通革命と次世代AI開発
The Boring Companyで地下交通の新提案
2017年設立のThe Boring Companyは地下トンネルによる交通渋滞解消を目指しています。従来のトンネル掘削技術を改良し、コストと時間を大幅に削減することを目標としています。
同社は掘削コストを1マイルあたり10億ドルから1,000万ドルまで削減することを目指しています。
2021年にはラスベガスコンベンションセンターで1.7マイルのループシステムが開業し、Tesla車両を使った地下交通システムの実証実験が行われています。このシステムは時速150マイルでの運行を可能にし、従来の地下鉄よりも効率的な交通手段の提供を目指しています。
xAIで新たなAI競争に参戦
2023年7月に設立されたxAIはマスクの最新企業です。AI技術の進歩と宇宙理解を掲げ、Grokという独自のチャットボットを開発しています。
xAIは現実を理解するAIの構築を目標としており、既存のAI企業とは異なるアプローチを取っています。
Q&Aコーナー
マスクが設立した企業の中で最も成功しているのはどこですか?
時価総額で見ればテスラが最大ですがSpaceXも民間企業として高い評価を受けています。
SpaceXは2024年現在、約2,100億ドル、つまり日本円で30兆円ほどの企業価値を持つとされており、民間宇宙企業として最大規模です。
どちらも異なる分野で革新をもたらしているため、厳密な比較は困難でしょう。
なぜマスクは複数の分野で同時に事業を展開しているのでしょうか?
マスクは持続可能な未来という一貫したビジョンを持っています。電気自動車、太陽光発電、宇宙開発は全て地球環境と人類の生存に関わる課題解決を目指しているのです。
彼は人類を多惑星種族にするという長期的な目標を掲げており、各企業の事業はその実現に向けた重要な要素となっています。
マスクの企業で働くのは大変だと聞きますが、実際はどうなのでしょうか?
確かに長時間労働や高い目標設定で知られていますが、革新的な技術開発に携わる魅力もあります。従業員の離職率は高いとされていますが、世界最高峰の技術者が集まる職場でもあります。
働く人にとっては挑戦的な環境と言えるでしょう。
今後マスクはどのような分野に進出する可能性がありますか?
既存事業の拡大に加えて、Neuralinkの医療応用やxAIの発展が注目されています。火星移住計画の実現に向けた取り組みも継続されるでしょう。
脳機械インターフェースと人工知能の融合による新たな技術領域への進出も期待されています。
まとめ
マスクの28年間の起業家人生は技術革新の歴史そのものと言えるでしょう。Zip2から始まったインターネット時代の成功は、PayPalでの決済革命、SpaceXでの宇宙開発、テスラでの電気自動車普及へと続きました。
現在も進行中のNeuralink、The Boring Company、xAIの各プロジェクトは、それぞれが人類の未来を左右する可能性を秘めています。脳機械インターフェースと人工知能の技術は人の能力を根本的に拡張する可能性を持っています。
彼の手がける企業は時としてはツイッター社のように論争を巻き起こしてもいますが、それだけ社会に大きな影響を与えているということでもあるでしょう。

