エスノグラフィーとは? マリノフスキーに始まる参与観察法
エスノグラフィーとはポーランド系英国人の人類学者ブロニスワフ・マリノフスキーによる参与型の研究方法である。
参与観察法とも呼ばれる。
20世紀初頭、マリノフスキーの第一次世界大戦中の南太平洋、トロブリアンド諸島で彼は研究を行った。そしてその研究はしばしばエスノグラフィー、そして近代民族誌学の始まりと考えられている。
従来は文献などの二次情報といった客観的な調査に重きを置かれていたが、それは研究者が研究対象のコミュニティの中に身を置く参与観察を重視したものでした。
マリノフスキーのこのアプローチは直接観察し研究者が研究対象に参加することで、より深く、いわばニュアンスに富んだ、文化理解を提供するものであったため現在まで続く人類学や社会学での研究手法となっている。
こちらの動画は実際に参与観察法で研究をしている研究者の様子だ。映像で理解したほうが直感的にわかりやすいかもしれない。
マーケティングリサーチにおけるエスノグラフィー
以上のように、人類学、また社会学分野における研究手法であるエスノグラフィー、またはエスノグラフィックリサーチは本来は人や文化を研究する学術的な定性調査手法でした。
しかしこの研究者が研究対象の人々の日常生活を観察したり、参加したりする没入型のアプローチはマーケティングリサーチにも使われるようになりました。
他のリサーチ手法では得られない、消費者の行動、態度、ライフスタイルに関する深い洞察を提供することができるため企業においても取り入れられたのです。
エスノグラフィーの事例 P&Gもイケアも
大手消費財メーカーであるプロクター・アンド・ギャンブル(いわゆるP&G)は、エスノグラフィーを用いたリサーチで知られています。
P&Gの研究者は、消費者の家庭で何百時間もかけて洗濯の仕方を観察したこともあります。そしてこの研究は洗濯のプロセスを大幅に簡略化する製品「Tide Pods」の開発につながりました。このような調査で得られた知見は、洗剤から紙おむつに至るまで、さまざまな家庭用品の開発や再設計において同様に用いられている。
イケアもエスノグラフィーを活用している企業のひとつです。イケアのリサーチャーは人々の家を訪問し滞在します。その暮らしぶりや家具の配置、スペースの使われ方、家具の使われ方などを理解することで知られています。こうした洞察はイケアの商品開発や店舗レイアウトの指針となっており、消費者の真のニーズに応えようとしています。
要するにどちらのケースでも、エスノグラフィーの調査によって、顧客のニーズや行動に関する深い洞察が得られ、商品開発やマーケティング戦略に反映される。社会学の分野でもこうした参入調査の手法は20世紀後半に使われているが、まさに同じようなことを企業が商品開発のために行っているのである。
このようにエスノグラフィは現代のマーケティングにおいて重要な要素であり、データ化しずらい消費者行動を理解することで、それを応用し競争力を発揮するものです。
エスノグラフィー研究の著名な例 なんとゴリラにも
学術的な一般知識として、情報学試験の分野にはあまり関係がない余談であるが、冒頭のマリノフスキーの例以外にエスノグラフィー研究の有名どころの例を2つ挙げておきたい。
マーガレット・ミードによるサモアの若者とアメリカの若者の比較した研究。これは具体的には双方の性文化や子育てを比較した研究だ。
そして人対象ではない有名な研究もある。ダイアン・フォッシーによるルワンダのヴィルンガ国立公園での研究。こちらはマウンテンゴリラの生態、そして彼らの社会構造を明らかにした研究である。
言語が通じなくてもコミュニティに参加をすることで見えてくるものがあるという、ある意味でこの研究手法の究極の例であろう。

