サイバーフィジカル・システムズ (CPS)とは
サイバーフィジカルシステムズとは一言で言えば、ソフトウェアによる計算プロセスと、物理的プロセスの間をネットワークで緊密に統合したシステムです。
このシステムでは組み込みコンピュータとネットワークが物理的プロセスを監視・制御します。
そして物理的プロセスが計算に影響を与えたり、逆に影響を与えたりするフィードバックループがあります。
これの主な利点は、他の方法では不可能なレベルの精度と自動化で物理プロセスを制御できることです。
より具体的にまとめるならば、物理システムの変化にリアルタイムで対応可能で、収集したデータに基づき自律的意思決定ができるようなシステムです。
IoTセンサーによる現実世界のデータ収集、クラウドでの分析・処理、そして物理世界への制御指令という双方向の情報フローが特徴です。要はサイバー空間での判断が直接的に物理世界の動作に影響を与えるわけです。
実例としては自動運転車、スマートグリッド、工場の自動化システムなどがあげられ、それぞれリアルタイムでの制御と最適化が主目的となっていることがわかると思います。
CPSとIoTの違い、CPSと組込みシステムの違い
これらの相違は計算プロセスと物理プロセスの間の緊密さによります。
CPSとIoTの違い
この二つはほとんど同じ意味、同じシチュエーションで使われることも多く違いがないこともあります。
しかし計算プロセスと物理プロセスの間がCPSの方がIoTより緊密に結びついた関係にあります。
CPSと組込みシステムの違い
組込みシステムは簡易な独立したCPSともいえます。
しかし単独での計算プロセスがより重視されているのが組込みシステムです。一方でCPSは計算プロセスと物理プロセスともに重点が置かれ、なおかつその間のネットワークが緊密なものです。
そして両者の計算プロセスも異なります。組込みシステムの計算も高度なものがありますが、組込みという名の通り、よりスタンドアローンな傾向にあるものです。CPSは入出力を緊密にするソフトウェアによる高度な計算が行われます。
つまりCPSって?
以上より、CPSの中でIoTを使うということは言いませんが、CPSのシステム内において組込みシステムが使われるということは往々にしてあります。
かなり簡略化して計算プロセスと物理プロセスの間の緊密さを概観するならば、両者の統合が高度な方から
CPS≧IoT>>組込みシステム
こうしたイメージで覚えておくと良いと思います。
サイバーフィジカルシステムの例
サイバーフィジカルシステムの例として、まずスマートグリッドが挙げられます。
スマートグリッドでは配電システムが、組み込みコンピュータのネットワークによって、リアルタイムに監視・制御されています。
これらのコンピュータは需要に応じて配電を調整したり、故障を検知して隔離したり、さらには再生可能エネルギー源と統合することもできます。
CPSのもう一つの例として自律走行する自動車があります。自動運転車両は、さまざまなセンサーで環境を監視し、高度な計算でそのデータに基づいて意思決定を行います。
運転という物理的なプロセスは、意思決定という計算プロセスと密接に統合されており、車両はナビゲーションを行い、変化する状況に対応することができます。
他にもさまざまな産業でCPSは使用され業務が向上しています。製造業では生産プロセスの自動化と最適化、ヘルスケアでは患者の監視と治療、輸送では安全性と効率性の向上が図られています。
スマートシティは安全?CPSのデメリットとして挙げられる点
CPSは複雑なシステムであることが多く、その複雑さゆえに設計、実装、保守が困難な場合があります。
また、サイバー攻撃にも比較的脆弱です。
攻撃者がCPSをコントロールすることができれば、物理的に大きな損害を与える可能性があるためセキュリティの向上は特に現在重要な問題です。個別のインフラの組込みシステムは企業内の高度なセキュリティなどと比べるとセキュリティが脆弱なことが往々にしてあります。
単純にネット統合が流行っているからと効率化というメリットだけを見て乗り出すのは考え物です。
安全性を重視しないで単純なセキュリティのみで物理インフラをネットワークにつなぐ場合、信号機であったり配電システムであったり今までインターネット接続をしていないスタンドアローンのおかげで安全を保っていただけのシステムを、無防備にクラッキングの被害に晒すことになります。
企業がハッキング被害を受けた場合、甚大な経済的被害が出ることがありますが、公共インフラなどは実際の被害が経済的なだけにとどまらず、より酷い物理的被害として出ることになりかねません。
接続をする以上リスクは必然的に増える訳ですが、この費用便益のバランスをないがしろにすると、やらない方がよかったという事態になりかねないのでそこは我々情報処理技術者が注意するポイントです。
大規模になればなるほど利便性と同時にリスクも甚大なものになるため、完璧以上の徹底的なセキュリティが求められます。
サイバーフィジカルシステムとデジタルツインの違い
サイバーフィジカルシステムとデジタルツインは、どちらも物理世界とデジタル世界を結ぶ技術概念ですが、その目的と構造に明確な違いがあります。
サイバーフィジカルシステムはこれまで述べてきたように、物理的なシステムとコンピューターシステムが密接に統合された仕組みです。
一方、デジタルツインは、物理的な製品、プロセス、システムのデジタル複製モデルです。
現実の対象物をデジタル空間に正確に再現し、リアルタイムでデータを同期させることで、シミュレーション、予測、最適化を行います。
航空機エンジンの保守予測、建築物の設計検証、製造プロセスの改善などに活用されます。デジタルツインの主目的は、分析・予測・最適化であり、必ずしも物理世界への直接制御を前提としません。リアルタイムでの制御性が薄いわけです。
両者の根本的違いは、CPSが「制御システム」として機能するのに対し、デジタルツインは「分析・予測ツール」として機能することといえるでしょう。
CPSは自律的な制御を重視し、デジタルツインは詳細なモデリングと分析を重視します。
ただし、実際の実装では両概念が組み合わされることも多いので紛らわしいと思われる方がいるのもわかります。
デジタルツインの分析結果をCPSの制御に活用する統合的なアプローチは実際に注目されている分野でもあります。

